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留学記

2011年8月21日

留学報告 ~国立がん研究センターより~

Laser microdissection

留学報告 (市川寛 H16年入局)

 

大学院博士課程2年目の市川寛です。私は2011年4月より国立がん研究センター研究所へ国内留学させて頂いております。こちらへ来てまだ4か月しか経過していませんが、近況を簡単に報告させて頂きます。

 

私がお世話になっているのは、創薬プロテオーム研究分野(分野長:近藤格博士)という研究室です。この研究室では様々な腫瘍組織のタンパク質発現情報を網羅的に解析し、診断や治療に役立つバイオマーカーの開発を行なっています。タンパク質の網羅的解析は、この研究室で開発された大型のゲルと高感度の蛍光色素を用いた蛍光2次元電気泳動で行います。一度に数千というタンパク質を高い再現性を持って検出可能であることが利点です。これ程ハイスループットな実験系を稼働させているのは日本でもこの研究室だけです。他にも特異抗体を用いたウエスタンブロッティングや免疫組織化学染色による発現解析や、細胞株を用いたタンパク質の機能解析なども行い、癌の悪性度や予後に相関するタンパク質の細胞内での機能まで解析することができます。

 

私の研究テーマは「胃癌におけるリンパ節転移を予測するバイオマーカーの研究開発」です。他の癌腫で証明されている、もしくは一般的に癌の悪性度に関係のある分子を対象にした同様の研究は数多く行なわれていますが、タンパク質レベルの網羅的解析からアプローチしている研究は殆どありません。また、本研究では非腫瘍組織と比較した胃癌組織に特異的なタンパク質発現情報も解析します。この結果は、今後早期診断や個別化治療のマーカーを開発するために有用な情報です。

 

異動後初めの3か月は病理部で研修を行いました。極めて短い期間でしたが肉眼所見と組織所見の対比や実際の取扱規約に則った診断を勉強し、癌診療における病理学的知識の重要性を痛感しました。この3か月の経験はこれから行われる研究だけでなく、その後の

外科医としての臨床にも役立ってくれるものと思っております。

 

本格的な研究は7月から開始したばかりです。現在は顕微鏡下でレーザーにより目的とする組織を選択的に切り取り回収するLaser microdissection法を用いて、解析サンプルを準備している段階です。2年後には良い結果を持って新潟へ帰れるよう、日々研究に励みたいと思っています。また、この場を借りまして昨年度研究用の検体収集にご協力頂きました関連病院の先生方には心より御礼申し上げます。

Labo集合写真