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学会報告

2013年12月5日

次世代を担う若手外科医へ万国外科学会(ISS/SIC)入会のすすめ

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野

教授 若井俊文

万国外科学会(ISS/SIC)は、1902年にAntoine Depage (Brussels, Belgium) とそのグループが率先して、ベルギーの外科医・フランス、ドイツ、スイスからのゲストと集会を行い設立された。最初の国際学会は、3年後の1905年にBrusselsで開催され、Presidentを務めたのはスイスの外科医Theodor Kocher (Berne, Switzerland) であった。当時、Kocher教授は精力的に各国を廻っており、その業績はヨーロッパ・海外で広く翻訳され、高名な外科医の一人であった。彼の名声は、1909年に外科医としては初めてノーベル賞を受賞したことでさらに高まった。万国外科学会 (ISS/SIC) は、既に100年以上の歴史を有し、現存する国際学会の中で最古の学会である。

私が初めて参加したのは、卒後8年目の1999年ウィーン (Vienna) で開催された第38回万国外科学会であった。学会に参加して胆囊癌のport site recurrenceを知り、研究に邁進する動機を植え付けられる機会を得た。いつか世界の高名な外科医と肩を並べて議論し、国際学会賞を受賞できるような研究テーマを自らの力で完遂したいと考えるようになった。2001年に本学会は100周年を迎え、発祥の地Brussels, Belgiumで開催された。本学からも12演題が採択され、夏休み期間を利用して総勢14名が参加した。学会初日のOpening直後、北島政樹教授の100周年記念講演“Progress in GI cancer management: challenges in the 21st Century”を拝聴し、心から感動したことを今でも覚えている。この記念すべき100周年の学会で2年前に本学会で知った胆囊癌のport site recurrenceに関する研究成果を口演発表し、翌2002年に学会機関誌であるWorld Journal of Surgery 2002;26:867-71に研究成果が掲載された時の喜びは今も忘れられない。

北島政樹教授がPresidentを務め主催したISW2007(Montreal, Canada)では、大腸癌肝転移に関する研究がPrizeを受賞し、壇上で北島教授から表彰され、ひとつの夢が実現した瞬間であった。ISW 2013 Helsinkiでは、本学から中野雅人先生、坂田純先生の2名が“Yokohama Award 2013 ヘルシンキ”を受賞した。Award受賞により、上述2名の若手外科医は観光に行かず、自らWriter's Workshopに申し込み、2日間徹夜で英語漬けの日々を送り、自らの意志で努力し成長する姿に逞しさを感じた。

万国外科学会(ISS/SIC)が企画する試みに参加してみようと決めた外科医は、ISS/SICに参加してすぐに、この活動が知的刺激に溢れ、人間的にもやりがいのある学術的国際イベントであることに気が付くであろう。次世代を担う若手外科医には万国外科学会(ISS/SIC)に入会し、世界の外科学に触れる喜びを知ってもらいたい。そして、私は若手とともに医学研究を通じてエビデンスを創出し、日本から世界へ向けて研究成果を発信し続ける人材の育成に貢献していきたいと考えている。