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学会報告

2014年5月8日

IHPBA 2014ソウルに参加して

口演(若井先生)
ポスター発表(皆川先生)
口演(坂田)
ポスター発表(高野先生)
ポスター発表(堅田先生)
ポスター発表(須藤先生)
口演(廣瀬先生)

リポーター 坂田純先生(平成10年入局)

 

今回、2014年3月22日から27日までの6日間、International Hepato-Pancreato-Biliary Association(IHPBA)の第11回となるWorld Congress 2014が韓国のソウルで開催されました。新潟からは、若井教授を筆頭に皆川、坂田、高野、堅田、須藤、廣瀬(学年順)の肝胆膵グループ総勢7名が4泊5日で参加し、口演3題、ポスター発表6題、ポスター呈示4題の合計13演題の発表をしてきました。肝胆膵グループの日頃の研究の成果を発表する機会として、充実した5日間を過ごすことができました。今回の学会の様子や当グループからの発表内容を中心に簡単に報告させて頂きます。

 

3月24日から26日の3日間の朝7時からは、“Meet the Professor Session”と称して連日7つのセッションが、1時間、朝食(パン、ビスケットとコーヒー)付きで開かれました。肝胆膵外科領域の最新のトピック別に、世界各国から集まった著名な専門家(教授)2名によるdiscussionがなされるという内容でした。各領域の専門家の生の発言を聞くことで論文を読むのとは違った角度からそのトピックに対する理解を深めることができました。また、同3日間はLiving Legend Lectureというセッションが開かれ、肝門部胆管癌のBismuth分類で有名なフランスのHenri Bismuth先生に加えて、日本から幕内雅敏先生が肝移植のこれまでの成果を、二村雄次先生が肝門部胆管癌の治療成績等を発表されました。肝胆膵外科領域への日本外科医の貢献度の高さを再認識しました。その他、連日、肝移植、膵、胆道、肝細胞癌、大腸癌肝転移などのテーマ別にシンポジウムやディベートなどたくさんのセッションが開催され、各国からの参加者による熱心な討議がなされていました。

 

当科からの発表は、若井教授が「Histologic determination of the primary site of perihilar cholangiocarcinoma based on microscopic tumor invasion of the vasculo-biliary sheaths」という演題名で、肝門部領域胆管癌における肝門部胆管癌と肝内胆管癌との組織学的鑑別法に関する発表をしました。また、皆川講師は「Usefulness of low power CUSA in laparoscopic enucleation of pancreatic tumor located close to the main pancreatic duct」という演題名で主膵管近傍に位置する膵腫瘍核出の際の低出力CUSA使用の有用性を報告しました。その他、参加者全員が各々、1~3演題ずつ発表してきました。私自身としては、口演1題とポスター2題の発表をさせて頂き、ポスター発表の1題で“Best Poster Oral Award”を受賞させて頂きました。肝胆膵外科を志す外科医として大変光栄に思いますし、このような賞を受賞できたのは、若井教授をはじめとした諸先輩方のご指導あっての賜物と心から感謝しております。

 

今回、受賞した演題は「“Extended” radical cholecystectomy for gallbladder cancer」という演題で発表した臨床研究です。当科が胆囊癌に対して行ってきた“modified Glenn operation”の適応を明らかにすることが目的の研究で、pT2胆囊癌と限局した肝浸潤によるpT3胆囊癌でリンパ節転移が2個以内のものが良い適応であるという結論を報告させて頂きました。胆囊癌の研究は新潟大学第一外科肝胆膵グループが1980年代から一貫して行ってきているもので、その成果が今回このような形で認められ、個人としてだけではなく肝胆膵グループの一員としても大変喜ばしく思います。

 

韓国のソウルは新潟から飛行機で約2時間、その後バスで約1時間半と比較的短時間で到着でき、同じアジア圏でもあり国内旅行をしている感覚でした。3月下旬と比較的寒い時期に訪れましたが、幸い天候にも恵まれて過ごしやすかったです。学会の合間には、韓国ドラマでもよくでてくる古い王宮や北朝鮮との軍事境界線の近くまで訪れたりしました。特に、軍事境界線の近くは非常に緊迫感があり、平和な日本では決して感じ得ないものでした。

 

IHPBAのWorld Congressへの参加は、私自身は2006年にスコットランドのエジンバラで開催された第7回大会以来でした。この国際学会は肝胆膵外科領域に特化した学会であり、肝胆膵外科医が日常に直面している問題の解決の一助になるだけでなく、我々の専門領域において世界で何を問題としてどのような議論がなされているのかを直接体験でき、非常に刺激的に感じました。今回の国際学会での体験や“Best Poster Oral Award”の受賞を糧としてさらなる研鑽を積み、医学研究を通じて日本から世界に向けて研究成果を発信できるように努力していきたいと考えております。今後ともご指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。